●ダイエットに潜む拒食症の恐怖 近年、日本では痩せていることが美しいという風潮があり、特に若い女性を中心にダイエットが流行しています。 肥満は生活習慣病の原因となり、健康維持のためにダイエットが推奨されることもありますが、実は間違ったダイエットによって拒食症に陥ってしまう方が急増しているのです。 摂食障害の一種である拒食症とはどのような病気なのか、その原因や症状などについて詳しく見ていきましょう。 ・無理なダイエットは摂食障害への第一歩 1980年代のバブル期頃から日本ではダイエットブームが巻き起こり、現在でもダイエットに関しての意識が非常に高まっています。 日本人のモデルは痩せすぎと言われるほど細くて華奢な方ばかりが起用され、そういったメディアの影響もあり、痩せていることに憧れを持つ女性も多く見られます。 そのため、特別太っているわけではなくむしろ標準体重を下回っている人でさえ、さらに細くなりたいとダイエットを行っている方も多いようです。 しかし、そんな痩せへの意識の高まりに伴い、拒食症をはじめとする摂食障害の患者数も年々増加傾向にあるのだと言います。 体重が減ることへの喜びから痩せることに歯止めが効かなくなり、いつの間にか食べるという行為自体に非常に歪んだ意識を持つようになってしまうのです。 摂食障害は食べることを拒否する拒食症と、むちゃ食いなどを起こす過食症に分けられていますが、どちらも過度なダイエットが原因で引き起こされる可能性の高い精神的な疾患です。 ・拒食症ってどんな病気? 拒食症は神経性無食欲症とも呼ばれ、食べることや体重が増えることに異常な恐怖を感じるようになります。 主にダイエットがきっかけとなり、そこにストレスなどの様々な心理的要因が重なって引き起こされるケースが多いようです。 拒食症患者の男女比は1対9ほどで、より痩せることへの意識が高い女性に圧倒的に多く見られる病気です。 拒食症の患者はどんなに身体が痩せ細っていても自分は太っていると思い込み、今よりさらに体重を落とそうとします。 体重で見た場合の拒食症の定義としては、身長に対しての標準体重の80パーセント以下の場合とされています。 身体にとって必要最低限の体重を維持することも拒否するようならば、拒食症と判断される可能性が高いようです。 その他にも、栄養不足の影響などによって身体や精神にあらゆる障害をもたらします。 ・身体に現れる拒食症のサイン 拒食症によって体重が著しく減少すると、身体には様々な症状が現れ始めます。 僅かな量の食物しか取らないために栄養失調となり、脱毛や肌荒れが起きたり、内蔵機能の低下から平均体温が35度以下の低体温症になることがあります。 脳にも栄養が行き渡らずに次第に思考力も低下し、正常な判断ができなくなる場合も多いようです。 そのせいもあって一つの考えにこだわるようになり、特に食事に関しては自分の思い通りにならないと人が変わったように怒ったり取り乱すことも珍しくありません。 また、女性の場合はホルモンバランスの乱れから月経不順や無月経になります。 無月経の状態が長く続くと、子宮や卵巣が萎縮して月経の再開が難しくなってしまいます。 実際、体重が標準値まで増加して数年が経過しているにも関わらず、月経が戻らないという方もいるのだそうです。 拒食症による身体的な症状の多くは栄養が取れるようになることで回復してきますが、月経に関してはその後も長期間に渡って産婦人科での治療が必要となる場合があります。 ・大切な人が拒食症になったら 拒食症は、生きるために必要な行為である食べるということを拒否する病気です。 身体にも様々な悪影響を及ぼし、最悪の場合は命にも関わってきます。 そのため、身近な人に体型や食事に関しての異変を感じたら、一度精神科でのカウンセリングを受診させることをおすすめします。 摂食障害の患者は自分が病気であるという自覚がない場合がほとんどで、自力で治すことは非常に難しいのです。 身体や精神の状態から命の危険があると判断された場合には、入院をすすめられることもあります。 実際になった人でないとその心理を理解することが難しい病気とも言われており、周囲は非常に困惑することも多いかと思います。 しかし、拒食症の回復には家族を始め周囲の支えが必要となります。 身体的にも精神的にも回復して完治に至るまでは、最低でも3年はかかるとも言われているほど治療には長い道のりを要します。 もし家族や友人などの大切な方が拒食症になってしまった場合は、根気強く見守ってあげることが大切なのです。 日本での拒食症の発症率は、世界の国々と比べても非常に高い割合なのだそうです。 ストレスも大きな原因の一つとなっているため、現代社会においてその患者数も増加傾向にあり、今後もさらに増加していくのではないかと考えられています。 痩せて美しくなりたいと思って始めたダイエットのはずが、心も身体も蝕まれて美しさとはかけ離れた姿になってしまうのが拒食症の恐ろしいところです。 心身ともに健康な状態であることが、一番の美しさと言えるのではないでしょうか。